大学の専攻は経済学でした。卒業後は機械メーカーに就職し、主にマーケティングや製品の評価、それを基に開発部門・販売部門との連携を図る部署で働いていましたが、公務員の友人たちと話をするうちに、地域と向き合う仕事がしたいと思うようになり、社会人経験を生かして機械職として入庁しました。
機械職の公務員というと、「バリバリのエンジニア」をイメージするかもしれません。もちろん機械の基礎知識は必要になりますが、仕事は設備の更新計画を策定したり、工事の予算管理をしたり、関係機関や業者の方と調整することが中心です。スペシャリストというより、どちらかというとゼネラリストの要素が強いかもしれません。コミュニケーション能力や協調性が求められます。
私がいま働いているのは、沼上清掃工場です。ここで、施設の運転管理や定期点検、設備の維持管理、整備計画の作成などの仕事をしています。沼上清掃工場の主な施設は、「焼却施設」と「資源循環施設」の二つです。焼却施設では、可燃ごみを焼却処理し、焼却で発生する熱エネルギーで発電もしています。資源循環施設では、粗大ごみを粉々にして再生可能な資源を回収しています。
清掃工場には、焼却炉やボイラー、タービン発電機、クレーン、破砕機をはじめ、見上げるような大型設備がたくさんあります。初めて見た時はその迫力に圧倒されましたが、同時に、これほど巨大なプラントを動かすことに、プレッシャーとやりがいを感じました。万一、重要なインフラ施設である清掃工場が、メンテナンスの不良で突然運転を停止してしまったら、市民生活に重大な影響を与えてします。責任は重いですが、技術者としてやりがいの大きい仕事です。
民間企業からの転職者であることから、民間と市職員の違いについて聞かれることがよくあります。個人的な意見ですが、一番違うと感じるのは、民間企業では「結果」が重視されますが、公務員は「プロセス」も大切にしなくてはならないことです。民間企業では、目標を達成することができれば、結果に至るまでのプロセスは、ある程度個人の裁量に任せられています。一方、市職員はもちろん結果も大切ですが、そのプロセスも重視されます。報告内容は正しいか、資料にミスはないか、事前に部署同士のすり合わせを済ませているかなど、一つ一つ適正な手順を踏むことが求められます。
行政の仕事は、市民の皆様に理解してもらうことが欠かせません。業務の透明性という観点からも、正しいプロセスで業務が行われていることが重要です。また、市職員は数年で部署を異動するため、一つの事業を複数の担当者がバトンリレーのように進めていくことが多くなります。そのため、事業の背景や関係者の状況などの事業の進捗、プロセスを明確にしておかなくてなりません。また、個人プレーではなく「チームプレー」で仕事をする意識が強いのも、民間企業との違いかもしれません。民間企業は個人の実績・結果が主な評価の対象になりますが、行政の仕事は公共の利益のために、先輩や同僚、関係機関と連携しながら事業を進めていかなくてはならないからだと思います。
入庁前は自分の能力がどこまで通用するのか、という不安がありました。しかし、ありがたいことに静岡市は研修制度や人材育成制度が充実していたため、仕事をしながら、行政職員、技術職員としてのスキルを身に付けることができました。また技術職員は転職経験者が多かったため、転職者ゆえの相談に乗ってくれる同僚や先輩が部署内にいたことも心強く、とても感謝しています。これまでに3つの部署を経験してきましたが、どの部署も相談しやすい環境でした。課題や疑問があると一緒に考え、一緒に悩んでくれます。一つのチームで仕事をしているという温かな雰囲気があります。
私のように現場に配属される技術職員の業務には、大きく分けて、維持管理と設備導入の二つがあると思います。市民生活に欠かせない設備や施設を保守管理していくこと、施設改善等のために新たな設備を導入することです。現在、沼上清掃工場では大規模な改修工事を行っていますが、焼却施設では施設の延命化に加えて、二酸化炭素排出量の削減を可能とする高効率なタービン発電機など、新たな設備が導入される予定です。また、資源循環施設ではAI煙検知システムという全国初の画期的な技術が導入されました。確実な維持管理はもちろんのこと、脱炭素化技術など新技術へのアンテナを高くして、機械職として仕事のなかで新たなものに挑戦していきたいと思います。
平成28年度〜平成30年度
建築総務課
平成31年度
経営企画課
令和2年度〜
現所属
※掲載職員の所属・職位は令和5年3月現在のものです。
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