大学では福祉について学び、こころのケアが必要な人を支援する精神保健福祉士の資格を取得しました。静岡市の精神職に応募したのは、大学での学びや資格を生かして公共の福祉に関わりたいと考えたからです。
最初に配属されたのは、市民の精神保健福祉に関わる様々な業務を行うこころの健康センターです。ここでは、長期にわたりうつ状態で療養している方が、日常生活に復帰できるよう支援をしていました。入庁当時の私は、大学を卒業したばかりで知識も経験も不足していると感じていました。しかし、市民の方の目には「専門家」として映るため、毎日が緊張と不安の連続でした。そのようななかで、指導員の先輩についてもらって、的確なアドバイスとサポートをいただけたことは、とても心強く感じました。
3年目に異動になり、生活支援課に配属されました。生活支援課は、病気や事故など様々な理由で生活が苦しい方が一日も早く自立できるように、相談に乗ったり、サポートしたりする部署です。私が支援していた方のなかに、就労に消極的になっている方がいました。その方の気持ちに寄り添いながら、就労支援員と連携して支援するなかで、希望する就職先が見つかり、自立に向けた第一歩を踏み出してもらうことができました。
また、生活保護を受けている方のなかには、こころのケアが必要な方もいます。精神職としての知識と経験を生かして、精神科病院への受診・入院の同行など切れ目のないサポートができました。このように、行政の力を使いながら、一人ひとりの生活を支援できるのが、市の精神職の魅力ではないでしょうか。
令和2年度に異動し、児童相談所に配属されました。児童相談所は、18歳未満の子どもに関する様々な相談に応じる児童福祉の専門機関です。私はここで「児童福祉司」として、虐待相談や養護相談、障がい相談など、子どもや保護者が抱える福祉の悩みを伺い、問題解決に向けた社会調査や支援・指導を行っています。社会調査とは、学校や病院、保健福祉センターなどの関係機関と協力しながら、子どもや家庭の状況について把握することです。この調査結果に基づいて、福祉・心理・保健師などの専門的な知見を持った職員が話し合い、支援方法を決めていきます。
私たちはどこまでも子どもや保護者に寄り添った支援を目指していますが、感謝されるときばかりではありません。たとえば、子どもたちの安全を第一に考えた結果、保護者の意に反する場合でも児童相談所で一時保護することがあります。しかし、保護者と対話を重ねるうちに信頼関係が築かれると、次第に理解が得られ、支援を前に進めることができるようになります。その結果、子どもや保護者の「笑顔」を見ることができたときに、この仕事をしていて本当に良かったと感じます。
児童相談所に寄せられる相談は、千差万別です。たとえ同じような相談であっても、家庭の状況や背景により、同じ支援で問題が解決されるとは限りません。それぞれの家庭にあった支援を、子どもや保護者、関係機関と一緒に考えて、一緒につくっていくことが私たちの仕事です。
市職員には、市民や関係部署、関係機関と話す機会が非常にたくさんあります。言葉の選び方を一つ間違えると、誤解が生まれて不快な気持ちにさせてしまいます。そのため、相手の意見をしっかり聴いて、こちらの考えを丁寧に伝えることをいつも心掛けています。相談に訪れる方のなかには、将来への大きな不安を抱えている方や、こころに傷を負っている方もいます。そんな方からの相談に応えるためには、目の前の問題だけではなく、その方の育ってきた環境や背景なども見ながら、支援を考えていかなくてはなりません。
また、仕事を進めていくうえでは、一人では課題解決が難しいことも多く、上司や同僚と相談しながら、取り組む必要があります。いざという時に、お互いが頼れる関係、相談し合える関係であるためには、普段からのコミュニケーションがとても大切です。これまで私は精神職として、様々な分野の業務に携わってきました。時には初めて携わる分野もあり大変なこともありますが、様々な経験をし学び続けることで、自分自身の視野を広げることができる仕事です。
平成27年度〜平成28年度
こころの健康センター
平成29年度〜平成31年度
葵福祉事務所生活支援課
令和2年度〜
現所属
※掲載職員の所属・職位は令和5年3月現在のものです。
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